事業承継税制の特例ポイント解説 ①特例承継計画書

平成30年度税制改正により事業承継税制の特例(新事業承継税制)が創設された後、当事務所には多くのお問い合わせをいただいているところです。
問い合わせの多い事項について、当ブログでもこれから数回に分けて情報発信をしていきたいと思います。

事業承継税制の特例制度の適用を受けるためには、「特例承継計画書」の都道府県への提出・確認が必要になります。
具体的には以下の2点を満たす必要があります。
平成30年4月1日から平成35年3月31日までに、都道府県庁に「特例承継計画」を提出していること。
平成30年1月1日から平成39年12月31日までに、贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式を取得すること。

特例承継計画書の提出期間と自社株式の承継期間が異なっている点にご留意ください。
また、平成29年12月31日までに贈与・相続により株式を取得した場合は、特例の認定を受ける(あるいは通常の認定から特例の認定へ切替えを行う)ことはできない点についてもご留意ください。

【その他のポイント】
(1)変更申請
特例承継計画書の提出期限である平成35年(2023年)3月31日までに特例承継計画書の提出がされていれば、それ以後に変更申請を行うことも可能です。
これにより、後日後継者が変更になったり後継者の人数が変更になったりした場合にも、その変更は認められることになっています。
ただし、先代経営者の相続が開始してしまった後には後継者の変更はできないこととされています。

(2)特例承継計画の提出と自社株式の移転の順序
自社株式の贈与等の後に特例承継計画書を提出することも可能となっています。
基本的には特例承継計画書の提出→贈与等という順序のケースが多いものと思われますが、平成35年(2023年)3月31日までについては、贈与等→提出というパターンも可能です。

(3)先代経営者以外の者からの贈与に係る特例承継計画書の提出要否
事業承継税制の特例では、先代経営者からの贈与だけではなく先代経営者以外の者からの一定の贈与も特例の適用対象となりましたが、先代経営者以外の者からの贈与については特例承継計画書の提出は必要ありません。
なお、先代経営者以外の者からの贈与は、先代経営者からの贈与に追随する形でのみ特例の対象となるのでご留意ください。

(4)特例承継計画書の提出のみ行った場合(贈与等が行われない場合)
特定承継計画書を平成35年(2023年)3月31日までに提出したものの、自社株式の承継が平成39年(2027年)12月31日までに行われなかった場合でも、何らかの罰則やデメリットなどがあるわけではありません
現時点で事業承継税制の特例制度を使う見込みがなくても、将来的に少しでも使う可能性がある場合は、特例承継計画書を“とりあえず提出”しておくということも有用だと思われます。